横浜嚥下研究会

経鼻胃管栄養は、人工呼吸器患者における誤嚥性肺炎の原因である

Nasogastric tube feeding
is a cause of aspiration
pneumonia in ventilated
patients

EUROPEAN RESPIRATORY JOURNAL

S. Teramoto, T. Ishii#, H. Yamamoto, Y. Yamaguchi* andY. Ouchi*
*Dept of Geriatric Medicine, University of Tokyo, Tokyo, and#Pulmonary Medicine, Yokohama City University, Yokohama,Japan.

タイトル
経鼻胃管栄養は、人工呼吸器患者における誤嚥性肺炎の原因である
ヨーロッパの呼吸ジャーナルの最近の号におけるKOSTADIMAらの報告[1]。
早めの胃瘻造設は、経鼻胃管(NGT)と比較して脳卒中または頭部外傷が原因の人工呼吸器患者の人工呼吸器関連性肺炎(VAP:Ventilator Associated Pneumonia)の発症頻度が低いと報告した。VAPは集中治療室における重大な問題であり、人工呼吸器管理を受けている患者は感染を契機に20-30%死亡リスクを増加させる。人工呼吸器患者におけるVAPに対する予防的戦略は、ICU入室期間と死亡率[2]を減らすためにとても重要である。

古典的理論(胃肺仮説を含む)がVAPの機序を理解するために重要であり、病態生理学の最近の向上があるにも関わらずKOSTADIMAら[1]のstudyは院内肺炎と誤嚥性肺炎を詳細に考察していない。
人工呼吸器患者における口腔咽頭嚥下障害が誤嚥性肺炎やVAPにおいては増悪因子として重要な役割を果たすという[3、4]。脳損傷、重篤な脳卒中と意識障害は、鎮静剤と睡眠薬同様に嚥下反射を妨げる。これは、ヒトと動物の誤嚥性肺炎の発現[5]で説明されている。しかしながら、院内肺炎と誤嚥性肺炎は、ACE阻害薬の投与後に、嚥下反射の改善によって予防される[6]。

ACE阻害薬の投与により、ブラジキニンの蓄積とサブスタンスPが活性化され、咳嗽反射と嚥下反射に影響を与える。そして、肺炎の減少に繋がる。KOSTADIMAら[1] は経鼻胃管栄養はVAPのリスクとして熟考しているが、嚥下反射と咳嗽反射を評価していない。我々は、誤嚥性肺炎のリスクが嚥下反射と咳嗽反射の低下というstudy[7、8]から新しい診断検査を開発した。それは非常に容易で、協力を必要とすることなく寝たきりの患者の上でも行うことができる。このシンプルな嚥下誘発試験はすべての人工呼吸器患者のために適用することができる。嚥下反射の評価は、非常に重篤な患者におけるVAPの基礎をなす機序の手掛かりである。さらに、院内上顎洞炎がVAPの発生を増加させることが示唆され[9]、口腔咽頭材料(上顎洞を含む)の微少な唾液誤嚥はVAPの有意な原因といえる。
経鼻胃管栄養は、脳卒中患者における誤嚥性肺炎の有意な原因であることが知られている[10]。経鼻胃管が中咽頭まで少量胃内容物(逆流)を運び、材料(胃内容物)は嚥下障害を持つ脳卒中患者で下気道に容易に誤嚥されてしまう。この機序は、経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)には無いものである。この証拠(NGがCVA患者における逆流のリスクとなり、誤嚥性肺炎を誘発すること)は、経鼻胃管栄養が非常に重篤な患者におけるVAPの有意な原因であるという事実の追い風となる。PEGを経た栄養管理は誤嚥と誤嚥性肺炎を減らす非常に直接的な方法であるが、VAPを低下させる基本的なアプローチは嚥下反射の改善だと私たちは考えている。

胃内視鏡を用いたPEG手法が意識障害患者における誤嚥リスクの場合もあり、早めの胃瘻造設は患者の為にも非常に慎重に評価されなければならない。胃瘻管理されている嚥下障害患者は、誤嚥性肺炎で苦しんでいる可能性がある[11]。

我々は既述を考慮し、そこへ口腔ケア、ACE阻害薬、嚥下リハビリテーションを用いることが誤嚥リスクを減らし、人工呼吸器関連肺炎を減少させるアプローチだと信じている。

REFERENCES
1 Kostadima E, Kaditis AG, Alexopoulos EI, Zakynthinos E,
Sfyras D. Early gastrostomy reduces the rate of ventilator-associated pneumonia in stroke or head injury patients.Eur Respir J 2005; 26: 106?111.

2 Povoa P, Coelho L, Almeida E, et al. C-reactive protein as amarker of ventilator-associated pneumonia resolution: apilot study. Eur Respir J 2005; 25: 804?812.

3 Teramoto S, Yamamoto H, Yamaguchi Y, Kawaguchi H,Ouchi Y. Nosocomial infections in adult intensive-careunits. Lancet 2003; 362: 493.

4 Teramoto S. The causes of aspiration pneumonia inmechanically ventilated patients: a possible pathologicallink with upper airway bacterial colonization. Br J Anaesth2000; 84: 694.

5 Teramoto S, Matsuse T, Ishii T, Matsui H, Fukuchi Y,Ouchi Y. Investigation of age on the aspiration using LacZgene transduction of adenovirus vectors. Am J Respir CritCare Med 1998; 158: 1914?1919.

6 Teramoto S, Ouchi Y. ACE inhibitors and prevention ofaspiration pneumonia in elderly hypertensives. Lancet1999; 353: 843.

7 Teramoto S, Yamamoto H, Yamaguchi Y, Ouchi Y,Matsuse T. A novel diagnostic test for the risk of aspirationpneumonia in the elderly. Chest 2004; 125: 801?802.

8 Teramoto S, Matsuse T, Fukuchi Y, Ouchi Y. Simple two-step swallowing provocation test for elderly patients withaspiration pneumonia. Lancet 1999; 353: 1243.

9 Holzapfel L, Chastang C, Demingeon G, Bohe J, Piralla B,Coupry A. A randomized study assessing the systematicsearch for maxillary sinusitis in nasotracheally mechani-cally ventilated patients. Influence of nosocomial maxillarysinusitis on the occurrence of ventilator-associated pneu-monia. Am J Respir Crit Care Med 1999; 159: 695?701.

10 Ferrer M, Bauer TT, Torres A, Hernandez C, Piera C. Effectof nasogastric tube size on gastroesophageal reflux andmicroaspiration in intubated patients. Ann Intern Med 1999;130: 991?994.

11 Carnes ML, Sabol DA, DeLegge M. Does the presence ofesophagitis prior to PEG placement increase the risk foraspiration pneumonia? Dig Dis Sci 2004; 49: 1798?1802.

原著はコチラ
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