横浜嚥下研究会

教えて ティーチャー 第5回「外科的治療法」の2

このコーナーは、当会のナースが、日々の臨床の中で湧き上がる嚥下にまつわる「あれ?なんかおかしくない?」といった違和感を各専門分野で活躍されている講師の先生方、当会の世話人にざっくばらんに質問するコーナーです。

担当者紹介

ナースみわ

急性期病棟勤務中にNSTリンクナースに任命されたことをきっかけに嚥下に興味を持ち、受講料の安さと講義の抄録に惹かれて受講したこの会で、いつの間にか世話人に。
ジャニーズと2人の孫をめでることが幸せな訪問看護ナース。


ナースなおみ

一度会った人の名前と顔を忘れない。巧みな話術と呑みニュケーション力で、どえらい先生方ともすぐに以前からの知り合いのように打ち解ける回復期リハビリテーション病棟協会認定看護師の資格ももつナース。最近の趣味は毎日ジムで韓流ドラマを見ながら鍛えている。3人の子とゴスペルを愛する肝っ玉母ちゃん。


つばめ太郎

当会のホームページ開設にあたり、公募の中から生まれた、このコーナーのマスコットキャラ。南の国から横浜に住み着いたちょっとグルメなつばめくん。


第5回:教えて「外科的治療法」の2

前回からの引き続き、ティーチャーは、耳鼻咽喉科医師の西山耕一郎先生です。西山耳鼻咽喉科医院の院長で、横浜市南区で耳鼻咽喉科開業医としての日常臨床に加え、嚥下障害の正しい知識の普及に力を入れており、各学会で嚥下障害の臨床研究や症例報告を積極的に発表されています。
さらに、一般市民向けの書籍の出版やテレビ出演も数多く、嚥下障害の啓蒙活動にも力を入れております。

2011年より横浜嚥下研究会の代表を務めております。横浜嚥下研究会の会長挨拶をご参照下さい。

こんにちはー。学会ぶりだね。

本当だ!学会、久しぶりに企業展示があって面白かったね。横浜嚥下研究会の皆と生で逢えたのも久しぶりで、楽しかったね。

zoomで会えても、なんかこう、寂しいし。

そうね。まぁ、zoomの方がいいとこもあるけどね。

zoomといえばさ、お悩みあるのよ。

どしたの?zoom飲みだとビールが美味しくないとか?

笑 それもあるけど。 もっと深刻よ。

あ!この前言ってた、アレね。

そうよ!アレよ!

私もお悩みよ!zoomで、自分の顔見えるじゃない、マスクメイクに慣れちゃって、顔下のメイクあんまりしないもんだから。

そう!急にマスク外して、話せと言われると困るのよ。

この前ツバメ太郎に連れていかれちゃって、わすれてたけど、私達、西山先生に聞こうと思ってたよね。

先生、コラーゲン使って仕事してるって言ってた!アレね!

そうよ!アレよ!zoomでも安心して、マスクを外せるように、ほうれい線に、コラーゲン、入れてもらおうよ!

そうと決まればー。

せーの!教えて!西山先生ー!

そんな事だろうと思って連れて来ましたよ。

まだ、外来中だよー。ちょっと待っててー。

じゃあ、先生のクリニックにお邪魔しますわ。

太郎、行くわよ。クリニック行った方が話が早そうだわ。

ひー。おふたり、怖すぎるぅ。

そして、2人と一羽が、西山耳鼻咽喉科へ到着しました。

お待たせ〜。いつも、急に呼ばれるから、ビックリするよ。今日は、この後手術なんだよ。だから手短にね。

なんの手術?もしかして先生、ほうれい線取ってくれるの?

いやいや。それは無理。コラーゲンは使うけどね。

ほら、やっぱりー。

2人のほうれい線を消してあげたい気持ちはやまやまだけど。餅屋は餅屋。いつも言ってるでしょ。ちゃんと専門にかかってね。

えー。じゃあ、先生のコラーゲンは何に使うの?それが分かれば納得できる。

じゃあ、これからコラーゲン使って手術するから見学して行って。この患者さんはね、食道がんのオペ後から嗄声がある反回神経麻痺(迷走神経麻痺)のために液体でムセて声がかすれて出ない患者さんなんだよね。診察してみたら声帯麻痺があって、声帯が完全に閉まらなくなってて嚥下時にも閉まらないから、誤嚥性肺炎を繰り返してるんだよね。声帯を内方に移動させるために、これから『声帯内アテロコラーゲン注入術』をするんだよ。

食道がん手術後はあるあるで、結構困ってる人いるよね。

だってしょうがないじゃん。侵襲のある手術だもんね。

本当は正常の発声時はこうなるんだけど(写真1)

    

(写真1)

  

そうですね、声帯が閉じてて正常ですね。

次に写真2を見て~この患者さんは閉じないでしょ?

(写真2)反回神経麻痺の患者の声帯

あ、本当だ!

西山先生による解説:嚥下時に声帯の部分まで液体や食物が侵入することは良くあります。声帯が閉じれば誤嚥を防げますが、声帯が閉じないと誤嚥して、肺炎を起こす場合が有ります。動かない声帯を内方に移動する手術は幾つか有ります。一番良いのは入院して頚を少しだけ切り声帯を内方に移動させる手術を行います。しかしながら入院が難しい場合や緊急を要する場合は、外来にて局所麻酔で声帯にアテロコラーゲンを注入して、声帯を内方に移動させる場合も有ります。局所麻酔で行いますので、患者さんの協力が必要であり、行える施設は限定されます。

コラーゲン手技は、誰でもできるわけではなくて、術者を選ぶんだよ。患者さんの協力も必要だけど、局所麻酔、外来で日帰りでできるところがメリットだね。この手術で劇的にムセが消えて、肺炎も起こさなくなるんだよ。手術と共に食事の姿勢、管理栄養士による訪問栄養指導で食形態を工夫してもらうことも重要になるよ。

誰でもできるわけじゃないから、先生に出会えた患者さんはラッキーだね。

そうだよね~宝くじにあたるくらいラッキーだよね。

宝くじですか!当たると人生変わりますよね。

じゃあその宝くじで当選して私たちも〇〇美容外科で顔のシワにコラーゲン入れてもらいに行っちゃう?

いいね〜!!

お二人さん、どこまでもコラーゲンなんですね。

              (記事担当:看護師チーム上野美和、山本奈緒美)

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