在宅でも出来る評価はありますか
第4回横浜お口のトラブルのみこみ勉強会にて会場参加者からの質問に回答させて頂きます。
往診してくれる医師がいれば相談するのが良いでしょう。
VF(嚥下造影検査)は在宅で実施することは難しいため、可能であれば通院でVF評価ができる施設と連携し、コンサルティングを受けられる体制をとっておくことが望ましいと考えます。
では、これらの評価がすぐにできない環境があるかと思います。その場合の対応についてお話します。
在宅での評価のポイントは観察、情報収集が大切です。最初にお会いして挨拶を交わした時の声の性質(ひどいかすれ声、うがいのようなガラガラ声、力んだような声、フガフガした鼻に抜けるような声などは要注意)、声の大きさ、言葉の不明瞭さなどで、呼吸状態、鼻咽腔閉鎖、声門閉鎖、頚部の過緊張、口腔器官の動きなど、嚥下にとって大切な機能のおおよそ評価ができます。
また「最近痩せてきていないか」「食事時間が長くなってきていないか」「時々熱発することはないか」「食事中、食後に咳やむせ、声の変化(ゼロゼロ、ガラガラ声になる)などがないか」「どんな時にむせるのか、または呼吸や声質が変わるのか」「食後に痰が増えないか」などこれらを本人や家族に問診をすることで多くの情報を得られます。嚥下質問紙は広く利用されていますが、栄養状態、病歴、歯の状態、呼吸状態、口腔期、咽頭期、食道期、喉頭知覚などの多くの情報を得ることが出来、とても有用です。
反復唾液のみテスト(RSST)、改訂水飲みテスト、水飲みテストなどはスクリーニング検査としてよく使う方法ですが、実際はこれだけでは確実な判断が難しいことを臨床場面で経験します。特に高齢者ではムセないことが多くありますので、あくまでも目安として利用するのが良いかと思います。また唾液を嚥下している時や何か食べている時に、喉頭(のど仏)の動きを視診、触診することも大切です。それには、誤嚥が無い方の喉を日ごろから動きをみたり、触ったりしておくことが必要です。健常な方と比べてどのような状況か、例えば喉頭が拳上するスピードやパワー、拳上距離などが明らかに低下していれば誤嚥のリスクについてある程度の判断材料となります。
食事をすでにしているような場合では実際の場面を観察するのが最良の方法です。その際、座位の姿勢は安定しているか、姿勢は崩れていないか、頚部の位置はどうか、顎が上がっていないか、または下がりすぎていないかなどをよく観察します。また食事のペース、一口量、食形態などが適当であるかも見ていきます。これらに関しては工夫をすればうまく食べられることもあるので、嚥下に対し不利に働く条件があるか確認します。
嚥下は見えない部分ですので、そこを十分考慮して慎重に関わっていく必要があります。評価した後にどのようなアプローチ(リハビリテーション、条件設定)をして、それに対してバイタルがどのような変化をしていくかを細かく観察していくことが嚥下障害にかかわる中で大変重要なことです。
はじめにもお話ししましたが、VFやVEに勝る評価はありません。VEについては、痛がらせないように検査するにはテクニックが必要なので、耳鼻咽喉科医師に依頼するようことが良いでしょう。VFも、入院せずに外来で行う施設もあるので、近隣にそのような施設がないか是非探してみて下さい。これらを実施できる施設との協力関係を作っていくことは、患者または利用者にとって一番有益であると思います。
本文執筆:横浜なみきリハビリテーション病院 ST廣瀬祐介