Q.ムセと咳払いの違いについて教えて(H29.3.4改訂)
H26.4.26のプレイバックセミナーで頂いたSTさんからの質問に回答させて頂きます
ムセと咳払いの違いについて教えて下さい。水飲みテストの基準もムセ=吸気がはじめに確認されるものと捉えればよいでしょうか?
用語の区別
・ムセという用語は嚥下の場面で使用します(狭義)
・咳や咳払いは嚥下の場面以外でも使用されます(広義)
・ムセという用語は嚥下の場面で使用します(狭義)
・咳や咳払いは嚥下の場面以外でも使用されます(広義)
解説
ムセは咳嗽反射(不随意)といわれ、気道内へ侵入した異物を除去するものです。ムセは急激な吸気後に爆発的な呼気で異物を喉頭腔外へ追い出します。
この時に反回神経麻痺など声帯にトラブルを抱えている症例では声門閉鎖がしっかりと出来ないので爆発的な呼気流を作りだすことが出来ません。それなので嚥下障害症例において声帯トラブルは喀出トラブルに繋がるのでリスキーとなります。
耳鼻咽喉科領域の論文では、声帯麻痺と誤嚥との相関は10%程度と報告されています。評価場面において嗄声が存在する場合は、必ずその嗄声が①いつから②GRBAS(グラバス:音声評価尺度)③MPT(最大発声持続時間)④マニュアルテストを行なっておくことが肝要です。さらに鼻咽腔閉鎖や開鼻声の評価も加えておくと精度の高い評価になります。耳鼻咽喉科医もしくはSTに相談すると良いでしょう。
次に咳払いですが、肺野に残っている残気で呼気流を作ります(咳払いを「呼気反射」と書かれている専門書もありますが、臨床で呼気反射なる用語を聞かないので実用はお任せします)。そのためムセに比べるとパワーは明らかに不足します。ただ、随意的に出せるため、訓練ではこちらを導入しますね。
質問に戻すと、残念なことに咳払いをしている患者さんの一部には誤嚥が混ざっていることをVFでしばしば経験します。
水飲みテスト時にムセ=吸気がはじめに確認されるものと捉えてしまうと、上述した咳払い症例の誤嚥を見逃すことになります。
文責:クローバーホスピタルST 粉川将治