Q.誤嚥性肺炎の予防(H29.3.5改訂)
H26.4.26におこなわれたプレイバックセミナー回答
例えばケア領域である口腔ケアは誤嚥性肺炎予防に効果的という沢山の報告が出ていますが、間違えてはいけないのは、キレイ=誤嚥性肺炎予防という構図。もちろん有機物除去は感染症予防の基本ですから正しいことですが、本質の部分はこう考えています。
『毎日口腔ケアをすることで、覚醒状態の改善や精神機能賦活、QOL改善が見込まれる。また、本来の口腔内環境が戻ってくることにより唾液の分泌量、自浄作用が高まる。さらに口腔ケアをすることでサブスタンスPの放出が誤嚥性肺炎予防に繋がる』
健常者の7割は夜間に分泌物の不顕性誤嚥が存在するといわれており、就寝前のハミガキは効果が高いハズです。要介護高齢者には積極的に行う必要があります。
栄養領域では、十分な水と栄養を確保することが大切です。これが不足することで喀出能および免疫低下に繋がり、呼吸器合併症リスクが高まります。脱水は万病のもとですから、患者さんのin-outは把握しておく必要があります。
いたずらな絶食状態は腸管機能を下げるだけなので、腸が使えるなら腸を使うことが免疫をあげるための考え方です。経管は決して悪い方法ではありません。今の世の中『PEGは良くない』風潮になっていますが、患者を前向きにする『食べるためのPEG、コンディションを作るための経管』は必要なら行うべきです。逆に嚥下機能が荒廃しているような非可逆的な状態へのPEGは寿命だと考えますので、主治医と患者さん、ご家族でのお話合いが必要です。
薬の領域では、ACE阻害薬、抗パ剤、抗凝固薬、漢方といったものから報告が出ています。自験例では、なかなか効果を体感、経験することが出来ていません。疫学としての統計的有意差はあるのかもしれませんが、私の目の前にいる患者さんに効くかどうかは別問題なので。
リハビリは運動リハ、呼吸リハ、嚥下リハが誤嚥性肺炎予防に効果的です。あと、関係ないように思える脳トレも予防に効果的です(精神賦活)。また、お笑いもオススメ。笑って免疫を高めましょう。
逆流は誤嚥性肺炎予防においてしっかりと取り組むべき問題です。一般的には薬物による消化管のうごきの改善、経管栄養の見直し(種別、量、半固形化、投与速度、体位)は常日頃行われています。しかし、臨床において本当に守られているのは一部です。
例えば、食後の座位姿勢による上体保持は2時間が理想と専門書に書かれますが、2時間も保持出来る患者さんはおりません。同一体位による褥瘡の問題、オムツ交換、お風呂、その他様々な理由で上体は倒されてしまいます。看護師の理解はあっても、そのお手伝いをしている助手さんや、面会に来る家族は本人が「寝かせて、疲れた、シンドイ、かったるい」等と訴えたら臥床させたくなりますよね。
次に口腔ケアや吸引の問題があります。食後30分以内の他者による口腔ケア、吸引は嘔吐に繋がりやすいといわれています(絞扼反射が亢進するのでしょうか)。また、気切症例では気切交換が予定されている場合、2時間以上前に経腸栄養が終わっている必要があります。自験例では何度か気切交換で嘔吐されています。
今のところベットサイドに食後30分以上ベット〇〇度のような張り紙を貼って注意喚起するのが精一杯です。ご本人、ご家族、病棟と連携を図って逆流への理解を深めていきたいものです。
文責:クローバーホスピタルST 粉川将治