横浜嚥下研究会

嚥下に関係する歯科領域のQ&A

先日歯科の吉田直人先生の講座を聞きながら『これってどうなんだろう』という普段からの疑問を管理人がぶつけてみました。
とても勉強になりましたので皆様にもお裾分けしたいと思います

ブラシについて

歯ブラシのかたさの選び方

→基本はふつうでいい。ソフトだとコシがないのでプラーク(歯垢)除去が難しい。歯周病で出血が目立つ時はソフトもありだが、改善してきたらふつうに戻す。

歯間ブラシとデンタルフロスの違い

→目的が違う
歯間ブラシは歯と歯の隙間(根っこの三角形部分)の清掃を目的。フロスは歯と歯の境界面(サイドとサイド)を清掃する。

義歯についての質問

義歯の上下はどっちが重要?

→本来は上下でワンセットなのでどちらも重要です。

【詳しい説明】

上の義歯は唇、頬の力に加え上あごを広く覆う形状から、吸着力(吸盤の力)を利用できるので安定に有利です。
しかし下の義歯の安定は唇、頬の力だけでなく舌の力が重要な要素になるため、口腔機能が低下して、口腔周囲筋(頬、唇、舌など)の協調が損なわれると一気に義歯が不安定になります。
義歯の大きさも上に比べ小さいので吸着力も小さいので、上の義歯よりもより不安定になることが多いです。
また、義歯は噛み合わせで安定が得られますが、食べる時の姿勢が悪かったり、麻痺や弛緩などで咀嚼筋の機能が低下すると、顎位(顎の位置)がズレ、噛み合わせが変化します。そうすると比較的安定しやすい上の義歯も不安定になってしまいます。

したがって、歯科治療の戦略としては、「口腔機能の変化に適合した下顎義歯の安定→噛み合わせの安定→上顎義歯の安定」ということになりますので、下の義歯の安定を図ることが歯科治療上重要となりますが、口腔機能が著しく低下し、咀嚼なしの食事(ゼリー、ペースト食など)の場合はむしろ上の義歯だけ装着したほうがいい場合もあります。
上の義歯を入れると、口蓋の高さを若干低くできるので、舌の挙上に有利で嚥下を補助する効果があります。

下顎固定の概念から考えると片方だけなら入れない方がいいのか?

→上記の回答通りです。下の義歯だけ入れるというのはあまりありません。

入院時から絶飲食患者は義歯を外されたままだけど、入院時から入れたままの方がいいのか?私個人は義歯を使用していた患者は経口の有無に関わらず入院時から日勤帯だけでも装着してもらっている。
口腔内のバランスを保つためと考えているがそれで問題ないか?

→口腔内、義歯の清掃が保たれていること、義歯が痛くなく入れられること(あっていること)が前提で、絶飲食の患者さんにも義歯を入れておいた方がいいと考えます。
義歯を装着すると嚥下、発語に有利ですし表情も保たれます。

義歯がパカパカするのでポリデントがあるが患者に使っていいものか?

→緊急避難的に使用する程度と考えて下さい。義歯安定剤の使用にはコツがあり誤った使い方をすると、噛み合わせが不安定になるだけでなく、長期間の使用によって顎堤(入れ歯がのる土手)が異常吸収することがあります。早めに歯科医師にご相談下さい。

その他

指ガードは死亡事故があったけど再販されたものは大丈夫なのか?

→大丈夫です

歯周病はどうやったら治せるか?

→バイオフィルムが形成されている状態で、うがい、洗口液ではバイオフィルムは壊せない。バイオフィルムからは毒素が出ていて、歯茎へ炎症、顎の骨を溶かす。
噛み合わせが悪いと一部分だけ歯周病が悪化したりする。
日常的な自身のブラッシングだけでなく、定期的に歯科医院での専門的なケア(超音波による歯石除去や機械的歯面清掃)を行うことが大切です。

文責:ナガタ歯科医院 吉田直人

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