横浜嚥下研究会

平成26年度診療報酬改定における嚥下関連のお話

平成26年度の診療報酬改定の骨子が厚労省より発表されています。嚥下障害関連もそれなりの改訂があったようです。
新年度となった今、現場の立場からの見解を書かせて頂きます。

今回の嚥下関連改訂

厚労省ホームページ
平成26年度診療報酬改定の概要part.5
および個別改定項目についてより引用
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000032996.html


まず、PEGへの締め付けが加わったことは明らかです。点数が4000点下がったのはPEGの乱発を抑制させたいのでしょう。
年間50件以上のPEGを行う急性期病院は半額以下のコストになったので、作り手側からしたらウンザリでしょうね。大病院も嚥下をちゃんとやりなさいというメッセージをこめて嚥下評価2500点をつけたのでしょうがその縛りが相当キツイです
。麻雀で言うなら2ハン縛りどころか満貫縛りぐらいでしょうか。

来年度からは1年以内に3食経口摂取35%以上を達成出来ない施設はPEGが更にコストダウンという明確な答えも示されています。
私も急性期病院にいたのでわかりますが、PEGをいれてから35%以上を1年以内に経口へ戻すのは現実的に困難だと思います。
6年間高齢者~超高齢者の嚥下障害を相手にしてきた経験上、PEGが入るような症例は複数の疾患をベースに持っており、その複雑化した状態の結果が嚥下障害というカタチであらわれているので、そう簡単に経口へ戻すことは出来ません

データー的に言うなら、所属していた6年間でトータル70例のPEGを院内で行っていますが、結局3食まで戻せて胃瘻を抜去したのはたった1例。全体としては、嚥下障害患者を1000症例ほどみて、外部からの紹介を含めても胃瘻抜去はトータル4例。
確率でいうと1/250ですよ。
現実的な数値だと思いますか?しかも全員60ー70代前半、認知症なし、ADL自立といったオマケ付き。
所属していた病院の患者層にもよるのでしょうが、そんなに甘くないということは確かです

本文で触れた嚥下評価2500点ですが補足があります。
この評価時はVFやVEといった精査コストは含まれていないので、嚥下評価2500点+精査コストとなるようです。

次に摂食機能療法が改訂されていますが、これも実は厳しい条件が待っているようです。
正式名称は経口摂取促進加算。コストとしては倍とれる計算ですが、PEGの時と同様に1年間で経口3食35%以上まで持っていかないといけません。
しかもこれを導入する時必ず経管が入っていないとダメとのこと。
さらに月1回のVFもしくはVEによる精査(病院の持ち出し)とカンファレンスが必須となります。うーん出来る…出来ない…出来ない施設が大多数でしょうか。

さて、そんな改訂に付随したものが胃瘻の抜去への報酬。これは良い制度ですね。今までは胃瘻を抜くことに対して何もご褒美がなかったので

ここからはもしかしてだけど~といった話です。急性期、回復期、療養といった病床をもつ大グループは急性期で不必要な人にもPEGやNGを入れ、回復期や療養に送るといったやり方です。
当然急性期での決着が早いというのはありがたい話ですし、回復期サイドも点数が取れる。
今までは廃用が何でもかんでも使えましたが、点数をカットされた今目を付けるのは摂食機能療法。
トータルで試算した訳ではないので儲かるのかはわかりませんが、もしもこのやり方が流行ったら儲かるやり方ということでしょう。
患者主体の医療とは真逆です

4/9追補
第4回お口のトラブルのみこみ勉強会でPEGは今後どうなるのか?という質問を頂きました。
私の感覚では、PEGは作らない方向へ進んでいると思います。
寿命というものを認めないのは延命至上主義だったからであり、その風潮はだいぶ薄れて来たように感じます。
ただ、現実問題NG管理やIVH管理が増えましたが…

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