横浜嚥下研究会

喉頭ガン放射線後の症例

今日はカニューレの写真を提示しながら、症例報告をしたいと思います。

この写真は80代男性喉頭ガン放射線後の方のカニューレ内筒。
パッと見では物凄く汚れていると思いませんか?私も内筒を抜いた時はガーンと思いました。
写真だけでみると心配になってしまいますよね。

カニューレ内筒に血液が混ざっているのがお分かりかと思います。吸引は一切行っていないので、医原性による出血ではなさそうですね。
声門下に腫瘍残存を認めるとのことから、腫瘍由来の出血なのかもしれません。

この症例、認知症はありますがADLは自立していて、会話も気切孔を指で塞ぐことで可能です。ただ、音声は明らかに嗄声があり、G2R2B2A0S1といった聴覚印象でした。
前医によると嗄声の原因は両側反回神経麻痺によるものだそうで、左が先に麻痺し、その後右も麻痺したとのことです。
腫瘍が大きくなったのでしょうか。

放射線による目立った後遺症はなさそうですが、喉頭周囲の皮膚はワニ皮のように硬くなっていました。

気管切開の理由は誤嚥性肺炎による痰量増加でSatが上がらないとのことでした。
肺炎軽快後も気切を閉じにいかなかった経緯をみると腫瘍による声門下狭窄は今後更に進むと判断しているのでしょう。

食事は常食摂取、水分freeで残さずモリモリ食べています。
嚥下スクリーニング上は、RSST3回、座位MWST4点、s-sptは0.4cc、2ccともに3秒以内でした。
スクリーニングの結果は良かったのですが、聖隷式問診で引っかかりました(食後のタン増加)。半年以内の誤嚥性肺炎があり、両側声帯麻痺、silent aspirationを想定し、VFを行いました。結果は嚥下機能問題なし。

私の診たて能力の低さが露呈されましたね(笑)
唯一の収穫は正面像で反回神経麻痺を確認したことぐらい。
腫瘍により両側麻痺という送りだったのですが、右は画像上動いていました。
喉頭ファイバーで後日確認してもらいますが、きっと右は不全なのでしょうね。

さて、嚥下や音声を考慮するとワンウェイバルブ使用が適当なのですが、たん量が多くあまりにも手間なのでカニューレ変更は諦めました。

この症例はこのまま保存することが家族との話し合いで決まっています。
何が正しいのかわかりませんが、お互いが納得しているのならノープロブレムでしょう

8月30日追補

喉頭ファイバーを用いて、気切から気管内の上下をのぞきました
声門下は至ってキレイ、気切より下方もキレイ。あれ?何か情報と違うようです。
鼻腔より喉頭を観察すると、喉頭をまたがるように腫瘍が確認出来ます。
喉頭腔は明らかに狭窄がみられ、今後は閉塞に至るのでしょうか。
カニューレ内筒に血液が混じっているのは腫瘍からだと考えていたのですが、この時の観察では出血を確認しませんでした。
とはいってもあれだけの腫瘍なら十分出血はあり得るかと思います。
左声帯は腫瘍で見えませんでしたが、右は動きがありましたのでVF正面像通りの評価でよいかと思われます。

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