横浜嚥下研究会

リハビリテーション病院のお話

皆様はリハビリテーション病院ってどのようなイメージを持たれていますか?

リハビリテーションを毎日行って、社会復帰や家庭復帰を目指す病院というのが一般的だと思います。
でも違う部分が色々とありました。
今日はそんなお話です。

リハ病院に異動して何ヶ月か経ったのですが、意外と急性期に近い病態で送られてくる患者が多いことに驚きました。
確かに在院日数短縮が求められている急性期病院としては早く出したいですもんね。
その分受け皿になる後方施設に急性期っぽい病態が流れてくるみたいです。脳血管、心不全、肺炎、気切、COPD、術後、骨折etc…何でも来るのですね。

私は嚥下障害が専門なのでこういった患者さんの評価に入るのですが、NG管理とIVH管理がとても多いですね。
今のご時世を反映しているのだと思いますしょぼんそれなのでしっかりとしたアナウンスの下にそういった栄養管理が為されているかと思っていました。
ですが、患者本人や家族へ現在の栄養管理方法の意味や予後予測のアナウンスが全くなされていないことが多いことに気付きました

入院されてきた患者さんや家族に
『嚥下障害の説明はどのように受けていますか?』
と尋ねると8割方は何も聞いてませんと回答されます。
『それではこちらの病院へのアナウンスはありましたか?』
と尋ねるとだいたいは
『前の病院の先生がリハビリテーション病院で頑張れば状況がかわるから頑張ってくださいね』
と言われてこちらの病院に来ましたって言うんです。
リハ病院からしたら完全な丸投げですよ。

急性期で予後のアナウンスが多少でもされていればgoodですが、肺炎の治療だけをして転院されてくると話は別です。
まず十中八九誤嚥性肺炎ですから。こういった誤嚥性肺炎症例は元々frailty(虚弱)であることがほとんどで、NHCAP(医療介護関連肺炎)に当てはまります。
誤嚥性肺炎そのものより、症例のバックグラウンドに問題があるわけです。
例えば、加齢によってADLが低下したことで外出の機会が減り、それに伴って活動性が下がり、人との交流が減り、会話も減る。
日々考えることも無くなり、自然に意欲の減退と共に食事量の低下や水分摂取不足が起こってきます。
動かないし、話さないからエコカーみたいな状態になるのは当然なのかもしれませんね。
これを毎日繰り返すことで一番大事なQOLの低下が起こり、frailtyの状態が作られるわけです。
こうなると何が起きてもおかしくないと言えます。
ここに元々脳血管障害などを持っていたりすると嚥下障害が顕在化することもあります。
また、慢性心不全やCOPDといったものが増悪する時期でもあります。
さらにコンディションは明らかに低下していますから、免疫は低く感染症にかかりやすくなります。
これが老化や寿命なのかもしれませんね。

高齢者の誤嚥性肺炎は繰り返すことを念頭において何が問題なのかを明確にする必要があります。
ですから仮に嚥下障害があったとしてもそればかりに固執していては根本的な解決に結びつかないのです。ベース疾患、コンディション、環境(受け皿)というものを意識することが高齢者の誤嚥性肺炎においては重要なのだと思います。
ただ、こういった症例に胃瘻の話を主治医がすると『この間まで食べていたんです!』と家族に噛みつかれ、困惑することが多いようです。
やはり、説明は最初が肝心だなと思います。それなので急性期病院の先生方にはしっかりとしたアナウンスを望みます。
これは私だけでなく全国のリハビリテーション病院で勤務する人間は誰もが感じていると思います。

誤嚥性肺炎については、私が日々ネット上で勉強させて頂いている『EARLの医学ノート』をご参照ください。
クオリティの高さは凄過ぎの一言です。
http://drmagician.exblog.jp/21527127/

さて、私のいる病棟は全入院患者を経口の有無に関係なく私が嚥下評価するので漏れがないようにしています。
ある症例が入院されて来たのですが、送りではベッド上3食経口常食自力摂取と書かれていました。
ルーチンワークで評価に入ると衝撃の嚥下状態だったのです。
誤嚥が酷くて即経口を中止にし、主治医へ報告しました。
主治医が調査した結果、転院ギリギリまでNG tubeが入っていて、昨日抜いたという事実が判明。こんなことがリハビリテーション病院では起きているのです。
他のリハ病院のDr.に聞いても『どこも同じだよ』と。

今後少しでもこの状況を改善出来れば良いなと思っていますが、何から手をつけたらよいか(。-_-。)
とりあえずブログで発信してみました。

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