横浜嚥下研究会

嚥下訓練

嚥下訓練をすれば治ると思っている方って意外と医療従事者でも多いのではないでしょうか?でも正しい評価の下に訓練を行わないと治るものも治りません。今日はそんなお話です。

ご存知だとは思いますが、嚥下訓練には飲食物を用いる直接訓練と飲食物を用いない間接訓練があります。ここでは間接訓練について触れたいと思います

間接訓練は様々な方法がありますが、エビデンスがあるものは少ないと言われています。また、『ほとんどの訓練は手が掛かる割に効果が低い』というのも確かです。さらに今のご時世は認知症が多いですから、訓練の適応の問題もあります

さて、皆様は嚥下訓練をどのように位置付けているのでしょうか?
私は嚥下だけに捉われないように心掛けています。要は嚥下障害は全身病なのですから、全身を診るという訳です。精神機能、運動機能、呼吸機能から嚥下を攻めるというのも嚥下訓練の一つの考え方としてありだと思います。特に『肺炎は動かして治す』というのが私の師匠であるリハ医の口グセ。
また、医原性の寝たきりを作らないということも大事な考えですよね

最近は口腔ケアを間接訓練として位置付けることが増えてきました。この場合は認知症例にも嚥下訓練を行っていることになりますが、これだけで食べられるようになったら始めから食べられる嚥下機能だった(要は評価ミス)、もしくはコンディション低下が原因で二次的に嚥下が悪くなっていたと考えられます。つまり然るべき治療が終わり、コンディションが回復すれば二次的なものは消え、結果食べられるというものです。
もちろんこの絶食期間中にdisuseが加わる可能性が高いので、発声発語器官へ刺激を入れておく必要はあります。しかし、口腔ケアで咽頭期が改善されるわけではないので、これを一生懸命やっても食べられることに繋がる訳ではありません。
あくまでも食べる前の土台作り、もしくは誤嚥性肺炎の予防、認知症進行軽減といった位置付けの方がスッキリします。
(H25.9.12追補:口腔ケアをすることで、サブスタンスPの放出を促し、嚥下反射惹起や咳反射の改善が期待される。口腔ケアの真の目的はキレイにすることではなく、サブスタンスPの放出を行うものである。結果、誤嚥性肺炎予防に効果があるという論文を目にしました。
うーん、そうなると口腔ケアを一生懸命やれば咽頭期が改善されることになりますよね。
私が書いているものとは対局です…まあエビデンスはともかく、口腔ケアをしっかりやることには大賛成ですからこれからも続けますが、何かスッキリしませんね)

次に嚥下障害に留まる話ではないのですが、医療においての原則は正しい診断評価の下に治療訓練は行われる必要があります。つまり根拠が何かを明確に出来るということです

よく私が学会や地域の勉強会で症例報告を聞いていると、誰も彼もがシャキア訓練、バルン法をやっているのですよね。実は先日、そのような話を自ら経験しました。外部の施設でフォローされていた患者さんなのですが、VFでみると喉頭挙上、食道入口部の障害は否定的にも関わらず、ずっとシャキア訓練、バルン法をやらされていたわけです。さらに構音訓練のオマケ付き。dysarthriaはなく、発声発語器官の動きも悪くない。何のためにやっていたのかを患者本人に説明されていないことも問題でした

やはり、正しい評価の下に訓練を行わないとただの嫌がらせになってしまいます。シャキア訓練がいかにエビデンスがあろうと、相応しくない人にやるのはいかがなものでしょうか?

大事なのは評価です合格安易な訓練の選択は患者さんを苦しめるだけなので、よく吟味する必要がありますね。

こちらの記事もご覧ください

CONTACT お問い合わせ

当会主催の各講座に関するご質問はお問合せフォームをご利用ください

MORE