VF(嚥下造影検査)における経験談1
当ブログにアクセスされてくる方のワード検索をみているとVFやVEに関連したワードが多いですね。今回はVFにおける管理人の経験談をお話したいと思います。まずは標準から。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会の標準手順
日本摂食嚥下リハ学会嚥下造影検査手順
http://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/VF18-2-p166-186.pdf
次に用語と私なりの大まかな紹介です
嚥下造影検査
VF:VideoFluoroscopic examination of swallowing
VFは嚥下障害を診断する上で最も優れた検査です(golden standardな検査)。普段見えないものが見えるって有難い話ですよホント。
画像上は口腔~胃までの食塊の動き(相:phase)、それに連動する各器官の運動(期:stage)、感覚(sensory)を透視で確認することが出来ます。感覚は現象からの推測になりますので検査者によって差異が出るかもしれませんね。
また、嚥下法や代償法を用いたbest swallow探しも行います。
誤嚥している症例の場合はいかに誤嚥しないで食べられるか、咽頭残留しているならいかに減らせられるかetc…要は手段を選ばず、とにかく食べられる方法、リスク軽減を探すわけです。
間違ってもVFは誤嚥を見つけるだけの検査ではないことを強調しておきます。
ただしVFばかりに頼ると何でもかんでもVFになってしまいます。
そうなると臨床を進めるスピードは遅くなりますよね。急性期のSTの場合は特に評価スピードが要求されやすいので、VF待ちのため入院が伸びているようなことを病棟から言われる訳ですよ(私は現に言われていました)。
そのため、出来る限りはベッドサイド評価で進められることが望ましいでしょう。
回復期、療養所属のSTなら急性期とは逆に時間があるのでVFの実施についてはゆっくりと考えてくださいね。
私の場合、過去に誤嚥性肺炎を罹患しているなら急性期や回復期関係なく全例VFを行います。
これからもこの考えは変えないと思います。基本的にはNHCAPに属する方たちだと考えていますので繰り返させない対策、本人や家族との話し合いを持つ良い機会だといえます。
嚥下動態、それに連動したbest swallow、誤嚥、明日からの臨床に使える情報を出来るだけ拾えるかがこの検査の醍醐味でしょうか。
【VF撮影時の要点】
VFは撮影自体に難しさは特にありませんが、気をつけるべきポイントは、
①通常の位置合わせ
側面像において、喉頭描出が悪いので前方を絞った方が見えやすくなります。
また、車椅子の肘掛けに上肢を乗せる方が多いので、それを降ろさせます。
上肢を下げる、下げないによって肩の位置が変わり、結果喉頭気管の描出が変わります。
②自力摂取時
前傾位になるので、それを想定した位置合わせが肝要です。
特にコップ飲みだと頚部伸展位が容易に誘発されます。コップ飲みやストロー摂取、スプーン摂取は差異が生まれる可能性がありますので、どれが本人にとって有効か評価してあげると翌日からの臨床に結び付きます。
多分これは標準手順で書かれていますね。
③白黒反転の利用
レントゲンを用いるので、記録時は白黒反転で描出されます。
どうしても肩が入ってしまって喉頭気管の視野が得にくい、得られない場合はこの白黒反転像で喉頭気管の視野が得られることもあります。
動画だけでなく、写真として引き抜くのも時には有効だと思います。
④喉頭気管の描出
①に関連した話ですが、撮影で使用している機械と録画機器によって差が出るようです。
透視でみている時は描出されていた微少誤嚥が録画後の再生でみると描出されていないことが度々あります。
⑤VF中の音声
出来るだけ拾えるが望ましいです。
その時の状況をフィードバックする時に便利です。人の記憶は曖昧ですから、『あ、これって…』直感的に感じたものが後で忘れちゃうことはよくある話です。
検査中にしか感じられないことは結構ありますよ。
【VF評価場面】
評価者の観察力と評価中の引き出しの多さが問われます。
あくまでも治療的評価でもあるので、即時性がある方法や嚥下法はポンポンとその場で出せないといけません。前もってシュミレーションしておくと良いでしょう。
例えば、経験の浅いSTたちの事前シュミレーションをみせてもらうとテイク数が尋常じゃないほど多いんです。30度から始めて徐々に角度を上げていく、食形態変更、一口量変更なんてやり方は完全にアウトです。
何分かかるのかわかりません。
best swallow探しに躍起になって患者を疲れさせ、結局誤嚥により現場の医師が中止なんていうパターンも過去には経験しました。事前シュミレーションを指導者に相談しましょう。
指導者に伝える内容は、VFの目的と普段臨床でみている状況からの嚥下動態推測、どのようにVF場面を進めていくか(姿勢、頚部、義歯、カフ脱、介助、命令 、嚥下法、食形態、一口量など)です。
指導者側はVFの目的が本当に正しいのか、若い子の推測する嚥下動態、場面の進め方について助言してあげて下さい。
その為VFを実施する症例を指導者も一度は臨床で見ないといけないわけです。
指導者側も自分自身の臨床評価が正確なのかをVFで見直すチャンスですから腕磨きにはもってこいの方法だと思います。
最初から出来る人はいませんし、若い子をみて自身もそうだったなと思い返して下さいね。
答え合わせが臨床の腕を上げる近道です。私は今もこの方法で臨床と画像のギャップを埋められるように続けています。
余談ですが、私もVFの診たてで散々耳鼻咽喉科医の師匠を困らせました(笑)でも嫌な顔一つせずに毎回丁寧に答えてくれました。
指導者になるとアタマに来ることも沢山あると思いますが、愛を持って指導されると次世代に自分の指導が繋がりますよ。
私自身はVFの経験が上がってくると座位、命令にて中間トロミ5cc程度を嚥下させればおよその嚥下動態はみえるようになってくると考えています。その結果から条件を絞った方がはるかに効率が良いと思っています。
【VF中の誤嚥について】
必ずつきものですし、これが起きた時の反応がとても大事ですよね。
『VFは誤嚥するまで追う』というのが私の指導者であるリハ医からの教え。
VFは嚥下動態解析が中心ですが、誤嚥をみないと明日からの臨床が怖くて仕方がありません。
silentの存在を示唆する所見が臨床でs/oなら尚更です。どの程度の負荷をかけると誤嚥する、ムセの即時性、silentの有無、喀出を判断し、今後の呼吸器合併症リスクを予測しないといけません。
話が長くなったので今回はここで終わりにしますね。またどこかで続きを書こうと思います。