横浜嚥下研究会

嚥下調整食2013

嚥下調整食2013について、今日は嚥下の現場を預かっているSTの立場から発言したいと思います。
『コイツわかってないな』と思う先生方もいらっしゃると思いますが若輩者の意見としてご容赦下さい。

従来、最も一般的な基準は金谷先生の嚥下食ピラミッドです。L0-L5まで段階が設定されており、数字が大きくなればなるほど常食に近づきます(L5は常食)。つまり、実際に食べている物の数値化(ランクわけ)が可能になったわけです。これにより臨床上、主治医の経験をもとになんとなく提供していた食事を嚥下機能に合わせた食形態で提供出来るようになりました。

嚥下食ドットコムより引用
URL:http://www.engesyoku.com/

そういった意味ではこの嚥下食ピラミッドの功績は大きいですよね。この嚥下食ピラミッドの基盤を作ったのは聖隷の藤島一郎Dr.なので、本当に当時から臨床が優れていたことがわかります。

嚥下食ピラミッドが医療系にて普及し始めると、今度は介護系よりユニバーサルデザインフード等の区分が登場しました。そして各病院や施設は食形態区分を嚥下食ピラミッドで設定するところもあれば、ユニバーサルデザインフード等で設定するところもあり、転院や施設入所の際に用語の混乱が生じるようになりました。
これらを重んじた嚥下のトップランナーたちが業界全体を巻き込んで統一に向かったのが今回の嚥下調整食2013ですね。

実は3年前、浜松にいらっしゃる藤島Dr.のところにお邪魔した時には既に地域施設間の食形態統一が成されていました。つまり嚥下調整食2013のベースは完成していたというわけです。
(あれを見た時に自分の地域との嚥下医療格差を思い知りました)

次に日本摂食嚥下リハビリテーション学会より発表された嚥下調整食2013を確認してみます。今回は『コード』という名称を用いて段階を数値表現しています。このコードは0-4までの5段階設定になっていて、嚥下食ピラミッド同様に数値が上にいけばレベルの高い食事となります。嚥下食ピラミッドでは常食L5が存在していましたが、今回は常食を省いたようです。また、今回はL0にあたる『コード0』が二つの設定に分かれていて、jelly(ゼリー)の頭文字をとった『0j』とthin、thickの頭文字をとった『0t』になっています。ゼリーがダメな人もいればトロミがダメな人もいますから臨床に即していると思いました。またトロミの粘度設定をしっかりと統一してくれたのはありがたいですね。基準が明確なのは現場として非常に助かります。
次に段階名称を嚥下訓練食、嚥下調整食としたのも関わる人たちにとって明確になって良いかと思います。『訓練食』『調整食』という言葉だけでもリスクの程度が想像し易くなりましたね

しかし、今回の改訂ですべてが良くなった訳ではなさそうです。例えば『コード』という言葉はとっつきにくいですよね。シンプルさからいえば嚥下ピラミッドの方がわかりやすかったのかもしれません。また、ピューレ食、ペースト食、ミキサー食などの区別がつかないのは私だけでしょうか?今回の学会分類でも一括りにしているのでマニアとしては知っておきたいところです。

さて、実際の段階を説明するのは大変なので日本摂食嚥下リハビリテーション学会のホームページを見てくれると助かります。
http://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2013-manual.pdf

ここからは私のショッボイ臨床経験談にお付き合い下さい
今のところ訓練していて嚥下ピラミッドL0で誤嚥性肺炎になったのは1度だけ。
L1になると二桁の誤嚥性肺炎を経験していますし、残念な転帰を辿られた患者さんもいます。やはりタンパク質の含有量が大きな差を生み出しているのでしょうね。誤嚥時にタンパク質があると菌の培地となっている可能性を考えられていますが、実際のところどうなんでしょう?御存知の先生がいらしたら是非ご教授をお願いします

私の中ではL1摂取の可否が臨床上の生命線としています。カロリーだけの話でいえばL0でも一時的には何とかなるのかもしれません。ですが、コンディションを中長期的な視点でみると明らかにL0では全身状態はpoorになっていきます。ですから、L0が何とか食べられてもIVH管理や経管栄養管理から簡単に脱却することは難しいといえます。

最後に…
ドラゴンボールの悟空が食べていた仙豆を嚥下食の世界で再現することが出来ればイイですね

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